マインクラフトの中で、ゲームを創る

前回は、4回目のセッションから、N君と僕が1対1でひたすら戦うエピソードを紹介した。

今回は、7回目のセッションから、N君の考えたゲーム「真夜中の無人島でサバイバル」を始めるまでのエピソードを紹介する。与えられた制限だけでなく、自分で制限を設定して遊ぶ。楽しみは一方的に享受するだけではなく、自分で創り出すものでもあると、僕が学んだ時間だった。

この記事では、N君とメンターの僕との会話を、「マインクラフトのゲームシステム説明」と「メンターとして僕が感じたこと」を含めながら紹介する。

「メンターレポート」とは、実際のセッションの様子をメンター目線でレポートし、親御さんが読んでもわかるようにゲームの解説を加えたものです。
※【】で示された単語は、マインクラフトにおける用語です。


真夜中のサバイバルをしよう

今日のN君は、「無人島生活をしよう」のような遊びを提案してくれた。

「今日からねー、新サバイバルやっていこうかと。なんか、縛りを設けて」
「シン……サバイバル? ほうほう」
「うん、縛りを設けてやります」
「なるほど、おもろそう」

どうやら持ち物などの制限を設けて、サバイバルをするそうだ。N君は更に、【モブ】(牛やゾンビなど)の【スポーン】(出現)も調整しようとしていた。初期設定では、ゾンビなどの【敵】は夜か雨天時にしかスポーンしない。しかし、設定変更により朝や晴天時でもスポーンさせることができるそうだ。

「今回ねー、朝からでもモブがねー……んーと」
「あ~、朝からでもスポーンできるってこと?」
「そうそう、でもどうやってするか分かんない」

珍しくN君がやり方を知らなかったので、僕が調べることにした。

「なるほど、じゃあ僕が調べるで」
「調べてみて。『モブ スポーン』 とか」
「おけおけ」

検索によってモブのスポーン方法は分かったものの、N君の気まぐれでこの案は無くなった。代わりにN君は、時間を固定しようと言った。マイクラでは一日が20分で過ぎるので、すぐに日が昇り落ちる。おそらくN君は常に敵と戦いたかったので、敵がスポーンする夜のみに時間を固定したかったのだろう。

「夜のまんまにしてほしいな」
「え、いつも夜の状態? そんなのできるの」
「うん」

やり方はすぐ分かったので僕が設定したが、昼間で止めてしまった。

「んー、これできてる?」
「できてるできてる!! 太陽止まってる! でも夜にしなくちゃ」
「おけおけ!」

改めて、僕は夜で時間を止めた。

「夜に設定できた?」
「うん、今やったでー!」

装備は制限しよう

N君はすぐにサバイバルをし始めようとしたが、僕は持ち物が無かったので待ったをかけた。すると、N君が詳細に初期装備を決めてくれた。

装備には強さの種類があり、武器なら攻撃力、防具なら防御力が変わる。

「よし、じゃあ今からサバイバルはじめー」
「え、ちょ、持ち物は?」
「持ち物? 革の防具だけ」
「革の防具だけ!? えええ。了解でございます。ちなみに武器は?」
「石の剣。石まで(それ以上強い武器は使っちゃダメ)」

ちなみに革の防具は防具6種類中で最弱、石の剣は剣6種類中で2番目に弱い。N君は、ギリギリでスリルのある戦いを好むのかもしれない。

武器と防具は決まったが、それだけで生き抜くことはできない。ツルハシで鉱物を採掘したり、斧で木を取ることも必要だ。そのような採集道具にもランクがある。

「ツルハシとかは?」
「それも石まで」
「おけー」
「弓矢は、持とう。矢は2スタック(1スタック=64個)まで。で、松明も2スタック」

このようにして武器・防具・採集道具を装備した。

また、食べ物に関する設定もしてくれた。食べ物は、敵から攻撃を受けて減った体力を回復するために、必要なものだ。マイクラでは、豚や牛から肉を取ったり、畑で作物を植えたり、村で交易をしたりして食べ物を調達する。

「食べモノは最初に持ってていい?」
「ダメーー」
「えーーー」
「食べモンは自力で取るって感じ」
「えーーーーー」
「あと、もう一個深刻なことをお伝えしよう」
「お伝えしてください」
「……夜に豚とかは湧きません」
「ちょっと待って(笑)。無理やん。どうすんの」
「だから村とかで物資を集めるしかねぇ」
「キツ!! ハードモードや」

と、かなり難易度の高い設定になったところで、N君が号令をかけた。

「よしいくよ、せーの、サバイバル!」
「ああああああ」
「開始!!」
「あああダメだ、おしまいだ」

サバイバル開始!

ついに、サバイバルモードになった。ここでN君は、今まで決めた設定にストーリーをつけてくれた。

「あの、設定としては、普通に無人島に飛行機が墜落して、何故か夜がループしてるっていう」
「え、その設定おもろ」

まもなく、複数のゾンビがこちらに向かってきた。まず僕がゾンビを見つけて、声を上げた。石の剣で攻撃力が低いので、2人がかりでも全てのゾンビを倒しきるのに時間がかかった。

「あーーー!」
「ゾンビゾンビ」
「……おっし、倒した倒した。ほい、戻るぞーー」

ゾンビを倒したのち、2人で簡素な家に戻った。家ならゾンビに攻撃される心配がないので、落ち着ける。そこで作戦会議を始めた。N君は、村に行くことを目標に定めた。確かに食料を得るために、村に行く必要がある。

「こっからどうする?」
「村を探すぜ」
「おけい」

どこに村があるのか全く見当がつかない中、家を出て探索を始めた。すると、もちろんだが敵がワラワラと寄ってきた。逃げても良かったのだが、おそらくN君は戦いたかったのだろう。2人でしばらく応戦していた。しかし夜が固定されているので、際限なく敵がやってきてキリがなかった。

とうとう、2人の体力が切れて、ほぼ同時に死んでしまった。

この後、装備を改善して再挑戦するのだが、そのエピソードは次回のレポートで紹介する。


真夜中の固定に始まり、武器・道具の設定、そしてストーリーの創作が、わずか10分で行われた。N君が、よりスリリングさを味わうために自分でゲームを創り出したといえるだろう。

他にも僕は、N君の「リスクを高くする」行動が興味深かった。前回僕と一対一で闘ったときは、N君は僕よりも装備を強くして、僕に余裕で勝っていた。しかし今回、仲間として行動するときはリスキーな装備選択をしていたのだ。

さまざまな場面で子どもは違った一面を見せる。ひとつだけを見て「余裕のある勝負が好きだ」とラベリングするのではなく、子どもの嗜好・特性を多面的に見ていきたい。

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