ゲームは、「教える」経験をたくさん積める媒体

前回、僕が初めてN君とゲームdeコーチングを実施したときのレポートをお届けした。今回はその続き。マインクラフト(通称マイクラ)で一緒に遊んでいると、ほんの10分程度の中にたくさんのドラマが生まれ、N君の「好き」や「得意」が現れているとわかる。

今回は、子どもが「教わる」のではなく「教える」側になるということをレポートしていきたい。N君のワールドに入場して、一晩(約10分)が過ぎた。N君は実践の中で様々な知識を僕に教えてくれた。
この記事では、ワールドに入って10分後からのやりとりを、「マインクラフトのゲームシステム説明」と「メンターとして僕が感じたこと」を含めながら紹介する。

「メンターレポート」とは、実際のセッションの様子をメンター目線でレポートし、親御さんが読んでもわかるようにゲームの解説を加えたものです。
※【】で示された単語は、マインクラフトにおける用語です。

肉と石をゲットする

N君のワールドに入ってから10分ほどが経過し、満腹ゲージが減ってきた。
「肉を食っておこう」
「あそれ、焼いたほうがいいです!」
「あ、そうなんや」

前回も書いたが、マイクラでは、活動量に応じて満腹ゲージが低下する。満腹ゲージが高いと体力が回復するが、低すぎるとダッシュができなくなるなどのデメリットがある。肉や魚、果実などの食事をとることで、満腹ゲージを回復できる。

そしてN君曰く、生肉より焼いた肉の方が、効果は高いらしい。

森を抜けて僕達は、土と石の山を見つけた。
「こっちですー、ちょっとこっち来てください。ここで石集める」
「ほーい」
「来てくださーい。『落下死』に気を付けてください」
「まじか、りょうかい!」
「ここ、掘ってください。石回収してください」
「おっけー」
「石回収したら―、こっち来てください」

流れるように僕に指示を出してくれるN君。
【石】は様々な道具を作るのに有用らしい。

石をある程度回収し、N君についていく。歩いていると、海岸の近くに人と動物を見かけた。

「あ、行商人だ。間違えて行商人殺さないほうがいいですよ」
「殺さない方がいい?」
「うん、殺したらね、ラマに攻撃されまくる」

と、軽く解説してくれた。

食料確保のために、2人でいろいろな動物を倒していく。

「豚肉の方が (満腹ゲージの) 回復量が大きいんだよな」
「ほう、そうなの?」
「ただし豚を殺してもね、こういうチビのやつだったら経験値が増えないんですよ。経験値が増えると、お腹の減りが遅くなるんです」
「なるほど!! そんな機能があったのか」

いろいろ色々な知識を提供してくれるN君。僕はゲームが好きなので覚えやすいが、親御さんの場合、なかなか覚えられずにちんぷんかんぷんらしい。N君も、相手が理解しているとわかると説明が楽しいのではないだろうか……と思いつつ、僕はN君の話を聞いていた。

「おーいこっちこっち……はい豚肉」
「まじか、ありがとう!」

N君から10個ほどの生豚肉をもらった。ゲーム内で子どもは世界に詳しいため、より優しさを発揮できるのかもしれない。

「あ知ってました?プレイヤーが雷に打たれる確率低いらしいですよ」
「ほえー、現実もけっこうそうやね、てか雷打たれるんや」

と、移動中は余談を挟んでくれた。

オオカミをペットにする

僕達は、森の中でオオカミを見つけた。N君は、倒すのではなくペットにしようと言った。
「ちょっとこっち来てくださーい。オオカミ懐かせるとけっこういいんですよね」
「へー、あ、食べられるわけじゃなくて?」
「食べられるわけじゃありません」
「鶏は倒して大丈夫?」
「いいですよ。でも生で食べるのはあまりオススメしないです。腹壊して、お腹の減りが早くなるときがあるので」
「すげぇ、めっちゃ現実っぽい」

生の鶏肉や腐った肉を食べた場合、30%の確率で【空腹】状態になるそうだ。【空腹】状態になると、満腹度ゲージの減少が早くなる。マイクラには現実に寄せた設定が多く、面白いと思った。

オオカミをペットにするには、【骨】をあげる必要がある。N君が骨を用意して、僕にくれた。
「はい、これでちょっと餌付けしてください」
「え、これ骨?」
「で、そのオオカミに餌付け」
「なるほどなるほど、あ、いけた」
「懐いた! これね、付いてくるので別にリードとか使わなくていいんですよ」
「ほんまや! けっこう可愛いなぁ」

N君が手とり足とり教えてくれたおかげで、僕はスムーズに餌付けでき、オオカミのペット化に成功した。

スケルトンから防具をドロップする

また夜になった。敵が出てくる時間だ。案の定、弓を持ったスケルトンが僕達に攻撃をしかけてきた。
僕達も剣を持って反撃する。そうすると、オオカミもスケルトンを攻撃し始めた。
「自分が敵を殴れば、(オオカミも)そいつに攻撃してくれるって感じ」
「なるほどね!」
「便利な子なんですよねーー」
「ありがたいなぁ」

と、スケルトンを倒し……
「あ、革の服が取れた」
「あ、それ着たほうがいいです!」
「まじで?」
「これ防御力高まるので。着てみてください」

着ると、体力ゲージ(♡)の上に【防具の耐久値】が表示された。

敵による攻撃などでダメージを受けた場合、体力ゲージの代わりに防具の耐久値が減る。防具の耐久値が0になると、防具は破壊される。

「あ、ベッドあります?」
「うん、あるある」
「それじゃ寝ましょう」
「ほいほいー」

と、波乱万丈のマイクラday2は幕を閉じた。


この数分で分かったのは、N君の知識の多さと、それを素早く的確に伝えられる能力だった。
学生団体で活動したり、社会人の方と接する機会が増えるにつれて、人とつながったり知識をつけるための「教える」ことの重要性と、教える難しさを僕は実感するようになった。同時に「教える能力」は、地道な「教える」経験で身につくものだと感じていた。
ゲームは、「教える」経験をたくさん積める媒体なのだろう。

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